私は、ちっぽけな存在だった。
何を見る目も持たず。
何に触れる手も無く。
何か語る口さえ失っていた。
暗闇に沈む一つの塊。
それが、私だった。
そんな私が、たった一つだけ持っていたもの。
それは…希望。
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何と言えば良いのかなぁ…
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眩しい波が打ち寄せる浜辺で、私は空を見上げる。
濃い息吹を吐く緑の森を、私はゆっくりを見下ろす。
私は漂う。
この、美しい世界を。
その美しい世界に住む、人間達を眺めて。
世界は暗く、澱み、炎に包まれていても。
駆け出そうとする、この瞬間から。
広げようとする、その両手を。
私には希望しかないけれど、人間には夢もあり、愛もある。
それらは沢山だけど、たった一つの事。
いつか、あなたに伝える事が出来るだろうか。
私は思いを紡ぐ。
語りを配る。
そして、残骸を断ち切る。
人々が、きっと新しい紐を結んでくれると信じて。
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妹へ
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隠し小説三部作の、最終作です。勝手に三部作言ってますが、どれを読んでいてもいなくても、全く問題ありません。一応今回の「俺」は、「配り手」の「私」のお兄さんです。最初は関係ない人物設定をしようかと思ったんですが、ちょっと変えてみました。さぁ、これからは新撰組小説を書くぞ!(笑) 浮気は終了ですvvv でも、時たまこうした小説を書けたら良いな〜って思います。こんな我が侭に付きあって下さる皆様、ありがとうございましたvvv
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